【男性】男性更年期障害
病気ではないのに、中高年男性で「なんとなく不調」「突然のほてりや発汗」などが続けば、男性更年期のトラブルかもしれません。
女性特有と思われがちな更年期の症状は男性にもあり、男性ホルモンの低下やバランスの乱れが原因とされています。
女性の更年期障害は、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少する閉経前後のおよそ10年間に起こり、閉経後は徐々に慣れて症状は治まっていきます。
男性の場合は、男性ホルモン(テストステロン)は一般的に中年以降、加齢とともに穏やかに減少します。
男性ホルモンが減少する速さや度合い、時期は個人差が大きく、40歳代以降どの年代でも男性更年期障害が起こる可能性があります。
男性ホルモンの減少によるものを、加齢性腺機能低下症、またはLOH症候群と呼ばれます。

男性更年期障害の患者さんは約600万人とも言われています。
疲れやすい、集中力がもたない、イライラする、やる気がでない、性機能が低下した、などの症状をお持ちの方やうつ病の治療をしているが症状が改善しないような方は、男性ホルモンを血液検査で測定することをお勧めします。
「自分も男性更年期障害かな?」と思われた方は、気軽に当クリニックを受診してください。
症状について
症状は大きく身体症状と精神症状に分けられます、身体症状は、朝立ちの消失や勃起不全(ED)といった男性機能の低下が挙げられます。
その他、ほてり、全身倦怠感、筋肉や関節の痛み、筋力低下、骨密度低下、頭痛、めまい、耳鳴り、頻尿などの症状もみられます。
精神症状としては、不眠、無気力、イライラ、性欲減退、集中力や記憶力の低下などとともにうつ症状が出る場合もあります。
検査の流れ
まずAMS質問票で男性更年期障害の症状の重症度を判定します。
続いて、血液検査で男性ホルモンがどの程度分泌されているかを調べます。
その際、男性ホルモンの分泌にかかわる項目も調べます。
糖代謝(糖尿病)、脂質(高脂血症)、赤血球(多血症)、肝臓機能、腎臓機能、甲状腺機能、血中亜鉛濃度なども測定します。
また、前立腺がんが潜んでいないか調べるために前立腺がんの腫瘍マーカー(PSA)の測定も行います。
排尿症状が強い場合は、超音波検査を行い前立腺肥大症がないかを確認します。
これらの血液検査の結果は約1週間でわかります。
男性ホルモン(遊離型テストステロン)の値が7.5未満の場合、男性更年期障害と診断し、注射による男性ホルモンの補充を行います。
しかし、男性ホルモン(遊離型テストステロン)の値が11.8未満の場合で男性更年期症状が強い場合も、男性ホルモンの補充を行う場合もあります。
男性ホルモンの値が低くない場合でも、男性ホルモン補充療法が有効であったという報告もあり、男性ホルモン補充療法を行うかどうか慎重に判断し相談させていただきます。
治療について
男性更年期障害であれば、男性ホルモン補充療法で症状が改善することが多いです。
しかし、治療効果が安定するには約2-3ヶ月ほどかかります。
また、男性ホルモン補充療法だけでは改善しない場合が2-3割の頻度であります。
男性ホルモン補充療法だけで改善しない場合は、心療内科をご紹介させて頂き、心のストレスに対する治療と男性ホルモン補充療法を並行して行うことをおすすめします。
・男性ホルモン補充療法(Testosteron Replacement Therapy:TRT)
注射剤であるエナント酸テストステロン125㎎~250㎎を2~4週毎に筋肉注射します。(投与間隔は症状により変わります)
・漢方薬
男性更年期の漢方薬として、倦怠感などの症状が強い場合は補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯などを使用します。イライラ感がある場合は柴胡加竜骨牡蛎湯や抑肝散加陳皮半夏、抑うつ気分がある場合は半夏厚朴湯などを使用します。排尿障害や勃起障害がある場合は八味地黄丸、牛車腎気丸などを使用することもあります。
以下の併存疾患のある患者さんには男性ホルモン補充を行えません。
・前立腺がん
・乳がん
・重症の前立腺肥大症
・多血症
・重度の腎機能不全
・重度の肝機能障害
・うっ血性心不全
・重度の高血圧症
・重度の睡眠時無呼吸症候群
・抗凝固剤内服
