前立腺肥大症に対する【経尿道的前立腺吊り上げ術:UroLift(ウロリフト)システム】
前立腺肥大症に対する新しい手術治療である【UroLift(ウロリフト)システム】について解説します。
UroLift(ウロリフト)システムによる治療法は米国泌尿器科学会と欧州泌尿器科学会のガイドラインにて、前立腺肥大症の治療として推奨されています。
世界中で30万人以上の男性がウロリフトシステムで治療を受けています(2022年4月時点)。
日本でも2022年4月から保険適応となりました。
植込み型前立腺組織牽引システム治療の流れ
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ウロリフトシステムを経尿道的に挿入し、閉塞の原因となっている部位まで進めます。 | |
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ウロリフトシステムから送り出すニードルを介して小型のインプラントを留置します。留置したインプラントにより、閉塞の原因となっている左右の前立腺を圧迫し牽引します。 |
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閉塞した尿道がインプラントによって開かれ、症状が改善されます。 |
植込み型前立腺組織牽引システム治療の機器
デリバリーシステムにはインプラント1個が装填されており、ひとりの患者様に対して 通常4~6個のインプラントを留置します※1。
※1. Roehrborn, J Urology 2013 LIFT Study
デリバリーハンドル
ウロリフトシステムによる治療は、閉塞した尿道を再拡大することにより、迅速で信頼性の高い症状の緩和を提供します。
インプラント
外国製造医療機器等特例承認取得者:NeoTract, Inc.
選任製造販売業者:テレフレックスメディカルジャパン株式会社
販売名:UroLift システム
承認番号:23000BZI00038000
MCI-2022-0015
再現性の高い持続的な効果
患者様の良好な回復と持続的な治療効果が認められています。
個々の症例の結果は異なる可能性があります。
側葉肥大及び中葉肥大を含め、前立腺体積が 100 ccまでの男性に適応となります。
施行前 | 施行後 |
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植込み型前立腺組織牽引システムによる治療後に期待できること |
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※1.Roehrborn, J Urology 2013
※2.Shore, Can J Urol 2014
※3.Shore Can J Urol 2014
従来の前立腺肥大症の手術と比べ、身体への負担が少ない点がウロリフト治療の特徴です。
手術時間も15分程度と短く、比較的早期に排尿症状の改善が期待できます。
しかし、全ての前立腺肥大症がウロリフト治療に適しているわけではありません。
ウロリフト治療を受けられる前に、基礎疾患の状態や前立腺肥大症の重症度など評価する必要があります。
治療の適応
前立腺肥大症による排尿症状があり、薬物療法の効果が不十分で症状が強い場合、また尿閉などの合併症がある場合には、手術治療の適用となります。
WAVE治療は侵襲が低い治療法であるため、従来の手術療法(TUR-P、HoLEP、PVPなど)が困難な症例(ご高齢の方、合併症が多い方など)に適用されます(日本泌尿器科学会;経尿道的前立腺吊り上げ術に使用されるUroLiftシステムの適正使用指針)。
また、ウロリフト治療に適した前立腺の大きさは100mL未満とされています。
抗血栓薬、抗血小板薬の中止は必須ではありませんが、休薬しない場合は出血の合併症が起こる可能性が高くなります。
治療の流れ
外来診療で、前立腺肥大症の状態(問診票、尿流量測定検査、超音波検査、尿道膀胱鏡検査など)や全身状態を把握し、ウロリフト治療に適しているか判断します。
治療の適応と判断された場合、手術予定日を決定します。
麻酔は基本的に局所麻酔で行いますが、静脈麻酔などを追加することもあります。
手術時間は前立腺の大きさなどで変化しますが、約15分程度で終了します。
手術直後、リカバリールームで数時間状態観察を行います。
状態に問題がなければ帰宅となります。
治療後の流れ
手術後、尿道を安静に保つために尿道カテーテルを留置します。
血尿などの問題がなければ、手術翌日の外来再診時に尿道カテーテルを抜去します。
治療に伴う合併症
主な合併症として、血尿、尿路感染、疼痛、頻尿、尿意切迫感、尿失禁、尿閉、結石付着などがあります。
いずれも軽度から中程度の症状となり、症状の多くは術後2~4週間以内に改善します。
また、ウロリフト治療は他の手術治療と比較して性機能への影響が少ないとされていますが、術前と全く同じ状態が維持される保証はありません。