夜間頻尿症
夜間頻尿とは、「夜間、排尿のために1回以上起きなければならない状態」を指します。
年齢とともに増える傾向があり、60歳以上では約6割以上の方が何らかの夜間頻尿を経験していると報告されています。
男性では前立腺肥大症、女性では過活動膀胱や骨盤底のゆるみが関連することもありますが、高血圧や糖尿病等の生活習慣病の関与も大きく、年齢や性別に関係なく起こり得ます。
夜間頻尿は単なる「年のせい」と片付けられがちですが、睡眠の質を低下させ、日中の眠気や集中力の低下、転倒リスクの上昇など生活の質(QOL)を大きく損なう症状です。
「夜に何度もトイレで目が覚める」 ーーそれは、体からのサインかもしれません。
原因を見極め、適切に対処すれば改善するケースも多くあります。
夜間頻尿は「我慢するもの」ではなく、「改善できる症状」です。
当院では、患者さん一人ひとりの生活背景や体の状態に合わせた丁寧な診療を行っております。
お気軽にご相談ください。
症状について
夜間頻尿の主な症状は以下の通りです:
・就寝後、1回以上排尿のために目が覚める
・トイレに行っても尿量が少ない
・起床後、日中の眠気や倦怠感が強い
・睡眠が分断され、熟睡感が得られない
夜間頻尿の原因は1つではありません。以下のようなタイプがあります:
・夜間多尿型:夜間に尿が多く作られるタイプ(心不全、高血圧症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などが関与)
・膀胱容量低下型:膀胱が小さくなっているタイプ(前立腺肥大症、過活動膀胱など)
・混合型:上記2つの原因が混在するケース
・睡眠障害型:睡眠の質そのものが悪く、軽い刺激でも目が覚めてしまう
検査のながれ
当院では、以下のような検査を行います。
・問診・夜間排尿日誌:いつ・何回起きているのか、1回の尿量はどの程度か、睡眠時間・飲水状況などを確認します。
※ご自宅での記録をお願いする場合があります。
・尿検査・血液検査:腎機能や糖尿病、感染症の有無などを調べます。
・腹部超音波検査:膀胱の大きさや前立腺の状態、残尿の有無などを確認します。
・必要に応じた検査:睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、睡眠検査(自宅で可能)をご案内します。
治療について
夜間頻尿の治療は原因に応じて多岐にわたります。
1. 生活指導:
・就寝前2〜3時間は水分摂取を控える
・カフェイン・アルコールの制限
・昼寝を短時間にとどめる
・下肢のむくみ対策(弾性ストッキング、夕方の足上げなど)
2. 薬物療法
・前立腺肥大症の治療薬(男性の場合)
・抗コリン薬・β3作動薬(過活動膀胱が関与している場合)
・抗利尿ホルモン製剤(ミニリンメルトなど)(夜間多尿型に有効)
・漢方薬(体質や症状に応じて使用)
3. その他の対応
・睡眠時無呼吸がある場合は、在宅での陽圧換気治療(当院でも可能です)
・睡眠障害が原因の場合は、必要に応じて睡眠専門医と連携した治療
・重度の心疾患や腎疾患などで加療が必要な場合は、適切な医療機関へご紹介