前立腺がん
前立腺は、膀胱と尿道の間にあるクルミ位の大きさの小さな臓器です。精液の一部を作り出す働きがあり、男性だけにあります。この前立腺にできる癌が前立腺がんです。
以前から、欧米諸国では男性のがんで一番多いのが前立腺がんでした。
PSA検査という血液検査による前立腺がん検診の普及もあり、日本でも近年前立腺がんの患者数が増加しています。
厚生労働省と国立がん研究センターにより2022年5月に公表された「2019年の全国がん登録」によると、男性は前立腺がんが9万4,748人と最も多い結果でした。
(引用:国立がん研究センター)
前立腺がんは早期で見つかり適切な治療を受ければ、前立腺がんが原因で命を落とすことは極めて稀です。50歳を過ぎたら一度前立腺がん検診を受けることをおすすめします。
また、前立腺がんと診断を受けても慌てる必要はありません。前立腺がんの多くは進行が遅いため、しっかりと主治医と相談して治療方針をたてましょう。
症状について
初期にはほとんど症状はありませんが、進行すると、血尿やおしっこが出にくくなることもあります。また、前立腺癌は進行すると骨に転移しやすい性質があり、腰痛などがきっかけで進行した前立腺癌が見つかることもあります。
検査の流れ
前立腺がんが疑われた場合、前立腺の触診、血液検査(PSA測定)、エコー検査を行います。
また、MRI検査を行うこともあります。
前立腺がんの疑いが濃厚であれば、前立腺生検という検査を行います。前立腺に針を刺して、前立腺の一部を採取します。採取した前立腺にがん細胞がいるかどうか顕微鏡で確認します(病理検査)。
前立腺がんが確定したら、転移の有無をCT検査などで調べます。
治療について
<早期の前立腺がん>
早期の前立腺がんのほとんどは、適切な治療を行えば治ります。
早期の前立腺がんの治療としては、大きく分けて①手術治療、②放射線治療の2つがあります。
どちらの治療法にも長所や短所があり、それを理解したうえで自分にあった治療法を考え選択することが大切です。前立腺がんの治療法について、もっと詳しくお聞きになりたい方は、相談だけでも構いませんのでお気軽に当クリニックを受診してください。
<転移のある前立腺がん>
前立腺がんは全身に転移のあるような患者さんでも、5年生存率は約70%程度あり、他のがんと比較してかなり予後が良いといえます。
転移のある前立腺がんに対する治療の中心は、ホルモン治療になります。
前立腺がんは男性ホルモンを栄養源にしています。ホルモン治療とは、がんの栄養源である男性ホルモンが精巣から分泌されなくなるようにする方法です。前立腺がんの栄養源である男性ホルモンがなくなると、前立腺がんがだんだん弱っていくイメージです。
具体的には男性ホルモンを低下させる注射を1〜3か月毎に行います。また、内服薬も併用することで効果を高めることもあります。ホルモン治療は抗がん剤と異なり、副作用が少ない治療ですので、高齢者や持病が多い患者さんでも比較的安全に行うことができます。
ホルモン治療は非常に有効な治療方法ですが、残念ながら徐々に効果が薄れていくことがあります。ホルモン治療の効果が弱くなってきたら、他のホルモン治療薬に変更したり、抗がん剤治療を併用したりして、治療を継続していくことになります。
最近は新しいホルモン治療薬が次々と開発されており、治療の選択肢は非常に多くなっています。