梅毒
梅毒は性行為でうつる性感染症の一種です。
梅毒の原因となるのは、梅毒トレポネーマという細菌です。
第2次世界大戦後の1949年には、日本国内で年間約17万6千人の梅毒患者が発生したと報告されています。しかし、この頃から梅毒の特効薬であるペニシリンの普及により梅毒は激減し、1990年代には年間500人程度の発生まで押さえ込まれていました。
ところが、2013年には梅毒発生が1200人を突破し2017 年には5820 人と増加しています。
梅毒にかかる年代は、男性で20~40歳代、女性で20~24歳に多く、性感染症としての特徴が表れています。また、母体から胎児に梅毒がうつる「先天梅毒」も増えています。
たとえ無症状でも性病にかかっているのではないかと心配な方は、梅毒検査を受けましょう。梅毒にかかっているかどうかは、血液検査で分かります。
症状について
性行為による感染から3~4 週間後、性器に軟骨に似た硬さのしこり(初期硬結)ができ、中心部から崩れてくる(硬性下疳)のが典型的な梅毒の初期症状です。通常は痛みを感じません。同時に、太ももの付け根のリンパ節が腫れることも多く、こちらも痛みを伴いません。性器以外にも、唇や乳首にこのような病変がでることもあります。
これらの病変は放っておくと、自然に消えてしまうことが多いのですが、消えたからと言って梅毒が治ったわけではありません。
感染から約3ヵ月後、全身の皮膚にバラ疹と呼ばれるピンクから赤色の発疹や、手のひらや足の裏に中心がかさかさと乾いた直径数ミリの暗赤色の発疹(梅毒性乾癬)が出てきます。また、口の中の粘膜に白色の斑紋が見られることもあります。これらの変化も放っておくと自然と無くなってしまうことが多いのです。
しかし、繰り返しますが皮疹などが消えても梅毒が治ったわけではありません。
無治療のままにしておくと、神経梅毒や全身の梅毒病変へと進展していくことがあります。
検査の流れ
上記の症状が梅毒の典型的なものですが、全く症状がないこともあります。一方、頭痛、視力の低下、関節炎、腎炎など多彩な症状や病態を起こすこともあり、梅毒は「偽装の達人」とも呼ばれています。
梅毒を診断するには血液検査が不可欠で、少量の採血で検査が可能です。
治療について
仮に無症状であっても、梅毒にかかっていることが分かれば治療が必要です。
梅毒の治療はペニシリンという抗菌薬の内服治療になります。最近では、早期梅毒に対して1回の注射で治療可能な持続型ペニシリン注射(ステルイズ®)も使えるようになり、当クリニックでも治療を行っています。
一方、ペニシリンに対してアレルギーがある方は、別の抗菌薬で内服治療を行います。
治療効果は血液検査で判定し、梅毒血清反応という数値が下がって安定化することを確認して治癒と判定します。
治療期間は梅毒の病期によっても異なりますが、基本的には4週間、重症の場合は8週間程度かかることもあります。
治療後も定期的な血液検査を行い、感染が治癒しているか確認します。