前立腺肥大症
前立腺は膀胱の出口で尿道を取り囲むクルミくらいの大きさの臓器で、精液の一部を分泌します。前立腺が肥大すると尿道を圧迫して、尿の通過障害をきたし、排尿症状を引き起こします。さらに、頻尿、夜間頻尿、残尿感などの蓄尿症状や、排尿後症状も起こします。
前立腺肥大症は加齢とともに増加し、70歳代では10人に1人以上が前立腺肥大症と診断されます。
前立腺が肥大する原因はまだはっきりとは解明されていません。しかし、男性ホルモンの働きが関与していることは間違いなく、中高年になって男性ホルモンを含む性ホルモン環境の変化が起こることにより、前立腺が肥大すると考えられています。
「頻尿などの症状は年のせいだ」と思って諦めてはいけません。前立腺肥大症が原因であれば、適切な治療を受けることで、尿の悩みから開放され、生活の質も劇的に向上します。気になる症状があれば、気軽に当クリニックへご相談ください。
症状について
前立腺肥大症では、排尿症状(尿を出すことに関連した症状)、蓄尿症状(尿を貯めることに関連した症状)、排尿後症状(排尿した後に出現する症状)がみられます。
具体的には、
<排尿症状>
・尿の勢いが弱い
・尿が出始めるまでに時間がかかる
・排尿の途中で尿が途切れる
・尿をするときに力まなければならない
<蓄尿症状>
・一日に何回も尿にいく
・夜に何回もトイレに起きる
・トイレまで我慢できずに尿が漏れる
<排尿後症状>
・排尿後にどうもすっきりしない
・尿が残っているような感じがする
などが前立腺肥大症の患者さんでよくみられる症状です。
検査の流れ:
まず問診を行います。前立腺肥大症の症状の重症化を質問票(I-PSS)で調べます。
検査の流れ
まず問診を行います。前立腺肥大症の症状の重症化を質問票(I-PSS)で調べます。
I-PSSでは、0〜7点は軽症、8〜19点は中等症、20点以上は重症とします。
QOLスコアでは、0〜1点は軽症、2〜4点は中等症、5点以上は重症とします。
問診に続いて、触診、尿検査、超音波検査、尿流量測定検査、血液検査(前立腺がんの腫瘍マーカーの測定)などを行います。
治療について
前立腺肥大症の治療には、保存治療、薬物治療、手術治療の3つがあります。
・保存治療:
保存治療には、生活指導、経過観察、健康食品などがあります。水分を摂りすぎない、コーヒーやアルコールを飲みすぎない、刺激性食物の制限、便通の調節、適度な運動、長時間の座位や下半身の冷えを避けるなどの生活上の注意は、前立腺肥大症の症状緩和に有効です。症状や合併症のない前立腺肥大症は通常治療の必要はありませんので、経過観察を行います。ビタミン、ミネラル、サプリメント、ノコギリヤシなど、前立腺肥大症に有効と言われる健康食品などがありますが、科学的に根拠があるものはありません。
・薬物治療:
前立腺肥大症が尿の流れを悪化させ、様々な症状を引き起こす理由として2つの機序が考えられます。ひとつ目は、前立腺の筋肉を収縮させる神経が緊張しすぎて、前立腺が強く尿道を圧迫することです。ふたつ目は、前立腺の収縮とは関係なく、大きくなった前立腺が物理的に尿道を圧迫して通りを悪くすることです。
以上から、前立腺肥大症に対しては大きく2種類の薬剤が使用されます。ひとつは、前立腺の筋肉を緩めて尿道の圧迫を解除する薬です。もうひとつは、前立腺自体を小さくして、前立腺肥大による尿道の物理的な圧迫を減らす薬です。
具体的な薬剤としては、
・α1アドレナリン受容体遮断薬
・5α還元酵素阻害薬
・抗アンドロゲン薬
・ホスホジエステラーゼ5阻害薬
があります。
これらを単独で使用することもあれば、組み合わせて治療することもあります。
漢方薬なども前立腺肥大症の症状緩和に使用することもあります。
・手術治療:
尿路感染、尿閉、膀胱結石、腎機能障害などの前立腺肥大症による合併症がみられる場合には、手術治療が行われます。
最近は新しい技術がどんどん開発され、様々な手術方法がありますが、内視鏡手術が標準的な手術として行われます。
当クリニックでは今後、日帰りで可能な手術治療(ウロリフト)なども導入する予定です。