【男性】男性型脱毛症(AGA)
AGAは、正式名称「Androgenetic Alopecia」の頭文字をとったもので、男性型脱毛症と呼ばれます。
成人男性が発症する脱毛症で、徐々に薄毛や抜け毛が進行する疾患で、おでこの生え際か頭頂部、あるいはその両方の髪の毛が薄くなっていくのが特徴です。
AGAの原因としては、遺伝的な要因や男性ホルモンの代謝産物であるジヒドロテストステロン(DHT)とされています。
年齢を重ねるごとにAGAを発症する可能性が高くなり、日本皮膚科学会によれば50代の約40%はAGAを発症しています。
ここで、毛周期について説明します。
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成長期(2〜6年):髪が伸びる
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退行期(2〜3週間):成長が止まる
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休止期(3〜4か月):抜けて次の毛が準備される
フィナステリド等のDHTを低下させる薬は「新しく生えてくる髪の毛を細く弱くしない」働きなので、すでに休止期に入っている髪は抜け落ちるのを防げません。
そのため、新しい成長期の毛が生えそろってくるまでに数か月かかるため効果を実感するのは3〜6か月後となります。

フィナステリド等のAGA治療薬の効果発現までの目安について説明します。
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体内での作用はすぐに始まる
服用後、数日で血中DHTが低下します。 -
見た目の効果はゆっくり
髪の毛の成長サイクル(毛周期)は数か月単位なので、-
早くても **3か月頃から「抜け毛が減った」**と実感する方が出てくる。
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6か月で効果を評価するのが一般的(国内外の臨床試験も6か月評価が多い)です。
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1年程度で効果が安定してきます。
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AGA治療薬のミノキシジルについて説明します。
・ミノキシジルの基本
元々は高血圧治療薬(血管拡張薬)として開発されました。
その副作用として体毛が増える(多毛症)ことが見つかり、外用薬としてAGA治療に応用されたという経緯です。
・作用機序
ミノキシジルは毛母細胞の活性化・血流改善により、成長期の延長と毛包のサイズ拡大を促します。
一方で、DHTを抑える作用はありません。
つまり、脱毛の原因(DHTによる毛包のミニチュア化)を止めるわけではないので、
「抜け毛のブレーキ(フィナステリド)」に対し、ミノキシジルは「発毛のアクセル」
という関係になります。
・市販薬との違い
表にまとめます。
| ミノキシジル外用(リアップなど) | ミノキシジル内服(クリニック処方など) | |
|---|---|---|
| 有効成分 | ミノキシジル(1〜5%) | ミノキシジル(1〜5 mgなど) |
| 作用部位 | 頭皮局所に直接作用 | 全身に作用(血管拡張による) |
| 効果 | DHT抑制なし。発毛刺激のみ | 外用より強力に毛包刺激するが、副作用も多い |
| 副作用 | 頭皮のかゆみ、発疹など | 動悸、浮腫、多毛、低血圧など |
| 販売形態 | OTC医薬品(第一類:薬剤師対面販売) | 医師処方のみ(日本では未承認) |
※当院ではミノキシジル内服は取り扱っておりません。
40-50歳以上の中高年のAGA患者さんは前立腺疾患をもっている可能性があります。
AGA治療薬は前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA値を低下させます。
半年以上AGA治療薬を内服していると、PSA値が約半分になります。
健康診断や人間ドックでPSAを測定した際、AGA治療薬を内服しているとPSA値が本来の数値より低くでてしまいます。
これに伴い、初期の前立腺がんが見逃される可能性がありますので注意が必要です。
治療について
AGAの原因とされるジヒドロテストステロン(DHT)を低下させる薬物(5α還元酵素阻害薬)の内服治療になります。
1. フィナステリド(内服薬)
作用機序:5α還元酵素(Ⅱ型)を阻害し、テストステロンがDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されるのを防ぐことで、毛髪のミニチュア化を抑制します。
効果:脱毛の進行抑制に有効とされ、ガイドラインでも**「強く勧められる(推奨度A)」**治療法です。
副作用:性欲減退、勃起機能低下などの性機能に関する報告がありますが、頻度は少ないとされています。
妊孕性:妊活中の男性でも使用は可能ですが、精液中への移行は極めて少なく、基本的に問題ないとされています。
2. デュタステリド(内服薬)
作用機序:5α還元酵素のⅠ型とⅡ型の両方を阻害します。より広範囲なDHTの抑制が可能です。
効果:フィナステリドよりも若干効果が高いという報告もあり、**「強く勧められる(推奨度A)」**とされています。
副作用:フィナステリドと同様に性機能への影響が報告されていますが、頻度は大きく変わらないとされます。
妊孕性:フィナステリド同様、基本的には妊活中の使用も問題はないとされていますが、不安がある方はご相談ください。
治療の副作用について
性機能関連で主に報告される副作用は、
・リビドー低下
・勃起機能障害
・精液量低下
・射精障害
です。
日本皮膚科学会のAGAガイドライン(2017年改訂版)では、フィナステリドもデュタステリドの両薬剤とも性機能障害はおおむね1〜10%未満の頻度とされています。
一方で、国内の市販後調査や臨床試験では「フィナステリドのほうがやや性機能障害の報告が多い」とされています。
・フィナステリド:リビドー低下や勃起障害の頻度は1〜2%前後
・デュタステリド:同様の副作用はあるが、フィナステリドよりやや少ない傾向
ところが、海外データではデュタステリドの方が強力にDHTを抑制するため副作用が強いのではないか、という議論もありました。
ただし、両者とも大きな差はなく、両剤とも「性機能障害は稀に起こるが、大部分の患者さんでは薬をやめたら元に戻る(可逆的)」であることが強調されています。
