前立腺肥大症に対する【Resum(レジューム)を用いた水蒸気治療:WAVE治療】
前立腺肥大症に対する新しい手術治療【Resum(レジューム)を用いた水蒸気治療:WAVE治療】について解説します。
Rezum(レジューム)という機器を使用する水蒸気治療(WAVE治療)は、体に負担の少ない新しい前立腺肥大症の内視鏡手術です。
2022年9月から本邦でも保険適応になり、2023年7月から当クリニックでも日帰りでWAVE治療を開始しました。
2024年9月時点で30名以上の方に日帰りWAVE治療を行い、術後経過は概ね良好です。
術後5年経過時点においても安定した効果が認められ、従来の内視鏡手術に比べて性機能が維持されることも示されています。
治療時間は平均10分以内程度と短く、局所麻酔での日帰り手術としても行えます。
治療効果は手術後約1カ月程度から現れます。
デリバリーデバイス先端部から103℃の水蒸気が前立腺内に9秒間放出され、対流熱によって前立腺組織を約70℃に加熱することで組織壊死をおこし、肥大した前立腺組織が退縮して尿道の圧迫を軽減する治療です。
レジュームによるWAVE治療は前立腺肥大症に対する低侵襲な手術治療で、欧米諸国では標準治療の一つになっています。
日本国内では、従来の手術治療では身体の負担が大きく手術を受けられない方がWAVE治療の適応とされています。
すべての前立腺肥大症がWAVE治療に適しているわけではありませんので、ご注意ください。
治療の適応
前立腺肥大症による排尿症状があり、薬物療法の効果が不十分で症状が強い場合、また尿閉などの合併症がある場合には、手術治療の適用となります。
WAVE治療は侵襲が低い治療法であるため、従来の手術療法(TUR-P、HoLEP、PVPなど)が困難な症例(ご高齢の方、合併症が多い方など)に適用されます(日本泌尿器科学会;経尿道的水蒸気治療に関する適正使用指針)。
また、WAVE治療に適した前立腺の大きさは30~80mLとされています。
抗血栓薬、抗血小板薬の中止は必須ではありませんが、休薬しない場合は出血の合併症が起こる可能性が高くなります。
治療の流れ
外来診療で、前立腺肥大症の状態(問診票、尿流量測定検査、超音波検査、尿道膀胱鏡検査など)や全身状態を把握し、WAVE治療に適しているか判断します。
治療の適応と判断された場合、手術予定日を決定します。
手術日は原則として、火曜日に行います。
麻酔は基本的に局所麻酔(尿道麻酔と仙骨麻酔)で行いますが、静脈麻酔(眠り薬)などを追加することもあります。
手術時間は前立腺の大きさなどで変化しますが、約5分から10分程度で終了します。
手術直後、手術室に隣接したリカバリールームで約1時間ほど状態観察を行います。
体調などに問題がなければご帰宅いただきます。
午前に手術を行った場合はお昼前後に、午後に手術を行った場合は夕方頃に帰宅可能になることがほとんどです。
治療後の流れ
術後は一時的に前立腺のむくみが生じるため、6~7日程度の尿道カテーテルの留置が必要になります。
術前に尿閉状態だった方は、術後のカテーテル留置期間が約1ヵ月ほど必要になります。
カテーテルの抜去は外来再診時に行います。
排尿状態の改善は多くの場合、術後1カ月以降にみられますが、多少個人差がございます。
治療の合併症
主な合併症として、血尿、尿路感染、疼痛、頻尿、尿意切迫感、尿失禁、尿閉などがあります。
また、術後に留置された尿道カテーテルの刺激によって、痛みや不快感が生じる場合があります。
これらの合併症のほとんどは術後早期に発生し、徐々に改善していきます。
術後しばらく経過した後にも、前立腺肥大の再発や尿道狭窄などの合併症も起こりえます。
WAVE治療を受けてから5年間で、再治療率は約15%(再手術4%、薬物治療11%)と報告されています。
WAVE治療は他の手術治療と比較して性機能への影響が少ないとされていますが、術前の性機能が100%に維持される保証はありません。
また、治療効果が現れるまでに約1ヵ月間かかる点も治療を受けられるにあたりご理解いただく必要があります。
治療にかかる費用
WAVE治療は健康保険適用です。手術当日の窓口での支払い額は、3割負担の方で約15万円、2割負担の方で約10万円、1割負担の方で約5万円となります。
自己負担限度額を超えた額が後日払い戻される「高額療養費制度」がありますので、後々支払った医療費の一部は戻ってきます。
また、手術当日の窓口負担を軽減するために、「限度額適用認定証」を取得することをおすすめします。
「限度額適用認定証」を会計時にご提示いただくと、支払いはご自身の自己負担限度額までになります。
「限度額適応認定証」を利用するためには、ご自身が加入している健康保険の窓口にお問い合わせいただき、「健康保険限度額適用認定申請書」の手続きを済ませておく必要があります。